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今では森林組合の仕事が
多岐にわたり、課題もある

曽爾村森林組合の元副組合長である西口賢次さんは、塩井地区の出身。プライベートで塩井での漆の取り組みに関わり、仕事では約50年も曽爾村の林業に携わってきました。「林業の、いいときも悪いときも見てきました。昔は間伐などをする業者が山に入っていましたが、今では森林組合がそういった仕事を含むすべての管理業務をしています。仕事が多岐にわたっているんです」。そうした状況で、組合として利益をどう出していくかも、課題の一つだったといいます。

ベテランと若いメンバーで“山の新しい価値”の提案を

「昔は山を持つことがステータスであり、山が財産だと見なされていました」と話す西口さん。しかし、昔のような価値がなくなってしまったことから、森林組合には“山の新しい価値”の提案が求められるようになっていました。そんなときにスタートしたのが「山と漆プロジェクト」だったのです。「2019年4月から8月に当組合に若いスタッフが3人入ったので、プロジェクトの受け皿として活動してもらえないかと村から相談され、関わることになったんです。若い人が入って雰囲気が変わりました。現場では私を入れて4人で作業をしていますので、こんな田舎の森林組合にしては若い人が多く、スタッフに恵まれました」と微笑む西口さん。ベテランの経験値と若きパワーで、プロジェクトに参画します。

それぞれの経験と感性をもつ
若い3人のパワーに期待

新スタッフの3人は、このプロジェクトをどう感じているのでしょう。地域おこし協力隊として同組合に関わった後、スタッフになった林宙さんは「漆には馴染みがなく、以前は漆がどの木なのかすら分からなかったのですが、京都に視察に行き、木を育てるという点では杉やヒノキの仕事と共通していると感じました。森林組合として新しい仕事を求めていた時期だったので、これが山づくりの一環として仕事になるのはとてもいいと思います」と話します。

学生時代に里山を研究し、木工品製作の経験を経て同組合に入った岩佐匡展さんは「最近、若い木工作家さんに器やカトラリーの仕上げで漆を使い、モダンに仕上げる人が出てきていて、漆はおもしろそうだと思っていました」と話します。そんな経緯から、ほかのメンバーとは異なる視線を送っています。「山づくりにとどまらない話に広がる可能性があるのかなと。里山では多様な木が生え、その木が生活のなかで活用されます。これまで関わる樹種は杉とヒノキだけでしたが、日用品に活用しやすい漆へと広がっていくのはいいなと感じています」。

奥田昌宏さんは狩猟免許を取得していて、曽爾村の隣の宇陀市で狩猟を始めています。漆の木も鹿に穂先や葉を食べられる被害が多発しているため、奥田さんの経験がこれから生かされそうです。「はじめは漆の木がどれかぜんぜん分からなかったんですが、少しずつ覚えました。地域おこしになるよう、学びながら関わっていけたらいいなと思っています」と意気込みを語ってくれました。

裾野が広がっておもしろい。未来の林業を生み出したい

プロジェクトでは、具体的には何をするのでしょうか。「植樹はもちろんのこと、漆の木を育てるための下刈りをしたり、鹿対策ネットの設置をしたり、いろいろなお世話をしていきます。将来的には苗づくりも視野に入れるかもしれません」と、林さんが教えてくれました。西口さんは次のように希望を語ります。「村が力を入れてくれて、村やいろいろな方と一緒になってやっています。事業になっていることで継続的に関わることができますし、裾野が広がっていておもしろいです。漆は、手をかけたらかけただけ増えるんです。未来の林業の方法の一つを、これから生み出していけたらいいなと思います」。

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