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学生時代に漆に魅了され
東京から曽爾村へ移住

東京で生まれ育った並木さんは、美大生だったときに漆器が好きになりました。漆器を使ったときの口あたりの良さに惹かれ、さらに漆塗りを体験して「美しいな」と感じ、不思議な素材だと魅了されたのです。その一方で、国産の漆が少ない現状も知りました。「漆の生産現場に興味がわきました。樹木から採取されるという、古くからの手法で続けられていることにも惹かれたんです」。曽爾村に漆の植栽活動をしている人たちがいると知り、縁ができて地域おこし協力隊として曽爾村へ移住したのは2017年のことでした。

漆は人が木に傷をつける行為で
いただく、木からの恵み

「植栽活動をしている方たちは、漆の素材としての価値を知らずに『紅葉がきれいだから』と漆の木を植え始めたそうで、おもしろいと思いました。私は、漆を増やしていくことはもちろん、漆がどういう素材なのかを伝えていきたいと考えています」。並木さんは、漆かきの現場や植栽地を案内するツアー企画、漆の樹皮を使った染めものや拭き漆の体験ワークショップ、金継ぎのサークル活動などでその魅力を伝え続けてきました。お客は村外に住む人が多く、大好評だったものの、気になったのは村民の「漆器は使わない」「漆はかぶれる」という声……。「漆への反応には個人差があってかぶれる人もいるのですが、そんな毒っ気も含めておもしろいと思うんです。漆は、人が木に傷をつける行為でいただく、木からの恵みですから」。

樹皮を、専用の道具を使って傷つけ漆を採取する様子。植栽地へ案内したり、様々な場所でワークショップなどを行い、漆の魅力を多くの人に伝えてきました。

曽爾村の人々の暮らしに
漆が根付くように

並木さんは今、村民にこそ漆のおもしろさを伝えたいと願っています。「漆に興味のなかった方から『漆っておもしろいんですね』と言われることが一番うれしいです。今後は教育分野にも漆を取り入れられるよう、何か企画していきたいですね。地元の方が『庭や自分の土地に漆を植えてみよう』と思ってくださり、広がっていったらいいなと思います」。高尚な工芸品と崇めて使わないのではなく、あくまでも暮らしのなかで使うことで守っていく—。並木さんは、そんな文化をつくろうとしています。

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